千葉県富浦の大房岬には、釣りの雑誌などでいくつもの`穴場´が紹介されており、大物の噂も絶えませんが、釣り場までの道のりは険しく、地磯としては、わざわざ苦労してまで近づく釣り人は、少ないようです。
しかし、道のりが険しいとは言うものの、クタクタにはなっても危険を感じたりするほどではない釣り場もあります。
それが、南けいせん場です。
以前はコンクリートの船付き場から海を独り占めできたのですが、昨年の台風で大破し、今は隣の磯場にしか入れません。
ただ、この磯場はいつも誰かしらが入っているほどの人気釣り場で、付近の釣具屋さんの釣果情報で、よく良型のクロダイやメジナの写真が登場しています。
これは昨年の1月か2月の話ですが、その南けいせん場から海に向かって右手に砂浜を渡った先に、気になっていた大岩のような磯があったので、夜釣りで、行ってきました。
駐車場から南けいせん場までかなりの距離がありますが、そこから更に5分程歩きます。
干潮時に、砂浜の先の崖の下にポツンとあるその磯は、近づくと崖から約1メートル離れた離れ磯でした。長めのスパイクシューズで渡れそうだったので、ザバザバと海を歩いてから、ようやく磯に登りました。
夕方の風は3m/sくらいなので、真冬とはいえ、何枚も重ね着して防寒対策をしていたので、問題なさそうでした。満潮時刻は23時頃だったと思います。
魚の気配もないまま、日付が変わる辺りから、風が強まってきました。そして、夜中の1時過ぎには、予報に反して向かい風の強風に変わってきました。気温は2度。体感温度が奪われて行きます。身体がガタガタと芯から震えて、釣りどころではありません。
もうダメだ。早いとこ退散しよう。
かじかんだ手で道具を片付け、さて、と磯から降りようとすると、海中電灯の先に見える景色に違和感を感じました。
あれっ?
なんと、来るときにザバザバ歩いて渡った浅場が完全に水没して、深さが1メートル位になってしまっていたのです。
夏ならともかく、完全に凍えそうな体で真冬の海に身体半分浸かるのは、自殺行為と思えました。
ヤバい!
磯の上で海に向かって立つのは寒くてもう無理。私は、海とは逆の崖側に向かって低くなる磯の斜面に隠れるようにして、身体を風から守りながら、早く潮が引いてくれと祈りながら、悪夢のような時間を過ごしました。
午前3時過ぎに潮がかなり引いて干潮に近づいたところで、なんとか渡れそうだった為、ようやく命からがら、脱出することが出来ましたが、寒さと疲れで駐車場までの登りの道のりが地獄のように遠く感じました。と同時に、恐怖が去ってもう大丈夫と心から安堵しました。
ちょっとした油断が命に係わるリスクにつながることをヒシヒシと感じた釣行でした。
離れ磯は本当に怖いので、渡るときは十分に注意しましょうね。