いきなりですが、海釣りには、無限のロマンがありますよね。
この広大な海は世界の海と繋がっている。海の中には仕切りもなく、いろいろな魚達が自由に泳ぎ回っている。
時には、えっ、こんなところで?という普通の地磯に大物が紛れて入って来ることもあります。
ですが、釣りのロマンと背中合わせにあるのが、荒れ時に容赦なく我々を襲う海の恐さです。
釣りを覚えてから2~3年経った頃でしょうか。メジナ釣りに夢中になっていた私は、少しでも大きなメジナを求めて、釣り雑誌からの情報をもとに、南房総の磯を渡り歩いていました。
その中でも南房千倉の白間津の磯は、釣り雑誌の情報で、簡単に磯に入れる割に30センチクラスのメジナなら入れ食い、マダイや回遊魚などいろいろな可能性を秘めているということで、早速行ってみることにしました。
当時の私には30センチでも十分大物の部類でした。
到着時刻は午前2時。場所は長島。
大きなメジナが釣れて、しかも簡単に入磯できる磯なら、きっとみんながよい釣り座を争って早くからやって来るのではないかと考えたからです。
舗装された細い道から磯場に続く未舗装の道に折れ、更にドロドロの泥道を通ってすぐのところに、車が数台止められる場所がありました。
この場所は、遠投のカゴ釣りで狙うアジ釣り師や、ルアーで回遊魚を狙うルアーマンで賑わう場所でもあると雑誌で紹介されていたのですが、なぜかこの日は一台も車が停まっていませんでした。これはラッキー、早く着いた甲斐があったと、イソイソと準備を始めます。
駐車スペースから釣り場までは歩いて数分。真っ暗で何も見えないため、重い荷物を抱えながら懐中電灯で進行方向を照らしながら、なんとか磯に出ました。
この横に長く広がる磯場の形状は、海に向かってスロープ状に登り、登りきったところから切り立った崖になっていて、カゴ釣り師やルアーマンはここに並んで思い思いの釣りを楽しむとありましたが、その場所はどうやら波を被っているようでした。時折、ドドーンと波が磯に当たって跳ねる音が地響きを伴って聞こえます。
一瞬躊躇しましたが、ドロドロの道で車を汚して、更に重い荷物を持ってやっとココまで来たので、なんとか釣りができる釣り座はないものかと、懐中電灯を照らしながら、しばらく様子を窺います。
- つづく -