釣りを始めて少し経験も増えて、誰にも頼らずに準備から実釣、そして片付けまでを難なくできるようになった頃の方々は、純粋に釣りを楽しむといった観点からは、今、まさに充実した日々を送っておられるのではないでしょうか。
簡単に釣れる魚は一般的に好奇心旺盛な子供の魚が多いと思いますが、それでも針掛かりした時に必死に逃げようと抵抗する力の強さには、釣りをしてみて初めて分かる新鮮な感動がありますよね。
グレは典型的で、子供でもエサを加えるとものすごい力で底に向かって潜り、逃げようとします。油断をしていると竿を伸されそうになります。この時のビクンビクンと何度も潜ろうとする力強さを体感し、その感触が忘れられなくて釣りにハマってしまった方も多いのではないでしょうか。
また、釣った魚を持ち帰れば、スーパーの鮮魚コーナーでは絶対に食べられないような新鮮な魚を刺身などで食べられるのも、釣り人ならではの特権ですね。みなさん、今度魚を釣りあげたら、その新鮮な目の色をスーパーの魚と比べてみて下さい。全然違いますよ(笑)
そして、ひとしきり小さな魚たちを釣り上げると、簡単に釣れる魚では満足が出来なくなり、私たちはゲーム性を求め始め、魚との駆け引きを楽しむようになります。つまり、特定の魚種を狙って仕掛や釣り方を工夫し、単に釣ることから、たとえ釣れなくても狙った魚種の気配を感じ取れただけで満足感を得られるようになります。
たとえば、クロダイを狙ってタナ取りを練習すると決めた日にベラが釣れたとします。ベラはクロダイと同様に海底付近に多い魚なので、たとえその日クロダイは釣れなくても、タナ取りは成功したということで、クロダイを手にするために、また一歩前進したと実感できます。
海釣りには、このように多様な楽しみ方がありますが、釣り自体の楽しみの他にもまだまだ魅力はいっぱいです。
新鮮でおいしい空気、目の保養になるのんびりした景色、心を和ませるトンビの鳴き声、朝陽夕日に染まる空の美しさ、そして夜には満点の星、などなど。漁港が運営しているレストランがあるところでは、安くて新鮮な魚料理も楽しめますよね。
釣り歴が長くなるにつれていろいろな天候や海況のもとで経験を積み、ひとしきりメジナと戯れた後、ある日ふと思います。
あの、クロダイを釣りたいと…
